「”可愛い” より ”比喩” がいい」のはなぜなのか―「ギブミーメタファー」から見るSTAR ELEMENTS―

百万年ぶりに記事を書きます。というのも、継続というものが極めて苦手なので、何かしらの強い動機がないと何をすることもできないんですよね。以前までの記事は大抵がサークルのアドベントカレンダー用だったと記憶しているのですが、今回は己の内から湧き上がる衝動によって今ここに文字を打ち込んでいます。

 

で、その衝動の話をするんですけど、皆さんは「THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION 17」に収録されている、「STAR ELEMENTS」の三人が歌っている「ギブミーメタファー」という曲はもう聞きましたか? いい曲なのでまだ聞いてない人は今すぐ聞きましょう。配信なら250円で買えます。

 

で、その「ギブミーメタファー」のCメロの歌詞に「”可愛い” より ”比喩” がいい」っていうフレーズがあるんですよ。自分が初めてこの歌詞を聞いたのはミリオン6th 神戸公演だったわけなんですが、曲途中に突然前述の言葉が流れてきて、一瞬「聞き違いかな?」と思ったわけです。だって意味が分からないですよね。まず形容詞と名詞を単純比較してる時点でわけわからんし、それでいて文意が神の領域にあるので地上人たる自分に汲み取れる代物でもないわけです。多分ですけど、多くの人が同じ場所でそう感じて、「わけわかんねぇ~」って笑っていたと思います。私は笑っていました。

 

ですが、あれから二週間以上が立ち、CDが発売され、ドラマパートも公開された今、前述の歌詞の真意の断片をようやく掴みかけてきたので、ここに記して自己満足に陥ろうと思います。

 

つまり、この記事はMTG17のネタバレです。まだ聞いていない人は今すぐブラウザを閉じてCDを買いに行ってください。ついさっき「配信版でもいいよ」みたいな話をしましたが、それでは不十分です。ちゃんとドラマパートも聞いてください。

 

ネタバレ注意のアレもちゃんとやったので早速本題に入ります

 

 

1.「ギブミーメタファー」

 

まず、このタイトルですね。英語に戻せば「Give me metaphor」、日本語では「比喩が欲しい」ぐらいのニュアンスでしょうか。正確にはメタファーは「隠喩」というアレなのですが、結局比喩なのでこう解釈します。

何も知らない人が「比喩が欲しい」と言われると、どんな反応をするでしょうか。まあ当然、初手で驚いて、そこから間髪入れずに「何言ってんだこいつ」となるでしょう。具体例が神戸公演での私です。

 

では、なぜそんなフレーズがタイトルに用いられているのか、これは「ギブミーメタファー」の他の部分の歌詞を一読すればなんとなくわかることだと思うのですが、アイドルである三人がステージ上で自分を表現するにあたって、「比喩(隠喩)」が必要だと考えているからでしょう。

(これは余談ですが、一番サビ終わりの「百パーセント希望だって 世界照らすスターだって 呼ばれていたいの」という歌詞から、この曲は三人がアイドルになった後の曲だと解釈しています)

そもそもサビ頭で「涙は最高のジュエル 経験は今日のファンデーション」と隠喩ごりごりなのを見て、比喩がテーマなんだと気づかない方が難しいですよね。

で、Cメロ終わりで「粗削りのエレメンツ どこまでだって 想像を纏えるはず」と言っているわけですから、彼女達は自分のありのままの姿だけじゃない何か(想像)をステージで表現したいと考えていることが読み取れます。

 

しかし、これは昨今のアイドル像とは少しずれているような気がします。地下アイドルとか、ご当地アイドルとか、最近では様々なアイドルが登場し、その結果としてアイドルという存在が身近に感じられているような気がします。その中で「STAR ELEMENTS」の三人はある種自分たちを周囲から遠ざけるような、他のアイドルとは一線を画すような存在を目指すようなグループを目指しているわけです。デレアニの「346ブランドの確立」みたいなやつです。

そこにはある秘密があったのです(ここでCMが流れる)

 

 

2.STAR ELEMENTS

 

今からその理由を解き明かしていくわけですが、当然これは一視聴者の解釈にすぎません。これが正解なわけではないし、これ以外が不正解というわけでもないです。なんかこういう言葉を残しておかないといけないという強迫観念があるので書きました。

 

まず、この話を考えるうえで、「STAR ELEMENTS」の三人を知らなくてはいけません。当然この「知る」というのは「名前とかプロフィールが分かる」ではなくて、「人物像やものの考え方が掴める」というやつです。でもそんなことは当然無理なので、各々で適当に脚色して補ってください。二次創作によくある手法です。

 

さて、みなさんの脳内に天羽光駆・神崎水桜・草薙星蘭の三人がスタンバイしたところで、いよいよ比喩の謎に立ち向かっていきましょう。

 

ヒントは「”可愛い” より ”比喩” がいい」の後ろに続く歌詞「未完成なままでだって そう、夢を見せられるってことでしょ?」です。

 

そうなんです。未完成なんです。

 

ここで、「いや、当たり前やん」となってしまっては困るんです。前提条件として、ステージ上でのパフォーマンスは完璧で完成されたものでなくてはならない、みたいな考え方があると思います。それはプロとしてはある種当然の心構えで、そのために日々の努力は欠かせないわけです。

しかしこの三人は自分たちが未完成であることを受け入れてしまっている。それでもなお「百パーセント希望だって 世界照らすスターだって 呼ばれていたいの」と考えている。

 

つまり、三人にとっては「比喩は武器」なのです。ステージ上で戦うのに必要な道具なのです。だから「涙は最高のジュエル」だし「経験は今日のファンデーション」だし「可笑しいくらいの言葉で例えて 飾り付けてくれるたび 元気のドレス脱げないって思ってしまう(歌詞一部改変)」わけです。(この後の「ハグミーメタファー」って言い回しが天才だと思うっていう話がある)

 

ただ、ここまでは思いめぐらせればなんとなくわかることだと思います。「こいつら比喩大好き人間やな」と一蹴していた人も多いと思います。でも、これではまだ正解に辿り着けていません

 

なぜなら、「”可愛い” より ”比喩” がいい」のです。この比較表現に辿り着くためには、二次創作特有の脚色と憶測が必要です。なのでそれをやります。覚悟しておいてください。

 

 

3.ライバル

 

アイドルになった天羽光駆・神崎水桜・草薙星蘭の三人は、互いのことを「ライバル」だと認識しながらユニット「STAR ELEMENTS」として活動しています。

 

ところでライバルってよく「好敵手」って書かれるじゃないですか。つまりは「敵として好ましい相手」って意味なんでしょうけど、あれって相手を認めているからこそ「好ましい」んですよね

もちろんSTAR ELEMENTSの三人も互いが互いのことを認めていると思うんですけど(ドラマパートの最終選考の光駆の心情描写が一番わかりやすいかも)、相手を認めるって何なんですかね。

例えばクラスにサッカーがめちゃくちゃうまいやつがいて、自分もそこそこうまいけどあいつには敵わねえやって思ったとき、「認める」っていう感情になると思うんですけど、それって敗北を味わうのと状況としては同じじゃないですか?

もちろんそうじゃないパターンで相手を認める、あるいは一目置くっていうのは無数にあると思うんですけど、少なくともSTAR ELEMENTSのうちの2人の中にあるのは「敗北」だと思うんですよ。

 

多分一番わかりやすいのは神崎水桜の話で、彼女は前回の「アイドルニューウェーブ」にも参加しているんですよね。で、そこで確実に「ミツルギマヤ」と何かがあって結局彼女に負けている。その何かは明かされていないわけですが、少なくとも過去の水桜の純粋な心を打ち砕いた出来事はあったわけで、そのせいで彼女は「裏の顔」を持ち合わせてしまった。そして今回のオーディションでも、光駆と星蘭がダンス審査で輝きを放つ姿に焦って事を起こしてしまったわけじゃないですか。そういう敗北です。BCの可奈の初期評価に引っ張られてしまった結果、水桜は才能という面で負けた、そんな風に考えています。

 

じゃあ草薙星蘭はどこで負けたのか。これこそ脚色の塊なのですが、草薙家は芸術分野で多くの天才を輩出しているそうです。クラシックの演奏家とかオペラ歌手とか......そんな家の人間が、突然「アイドルになりたい」と言いだしたんです。裏があるとしか思えなくないですか?(ここ、スーパー二次創作ポイントなので全人類の解釈を見たい)

 

私が思うに、草薙星蘭はあまりそう言った分野の才能に恵まれなかったのだと思います。家柄がどうとはいえ、遺伝情報はそうあてにならないもので、かえるの子がかえるになるかと言えばそうでもないのが実情です。それは上振れもするし、下振れもする。その下振れにいるのが星蘭なんです。幼いころから期待を捨てられていた星蘭は、「クラシックが無理ならせめて」みたいな感じでアイドルへの道を進まされている。そう考えています。家柄を汚すような子に生まれてしまった自分に与えられた最後のチャンスがアイドルだった。そんな追い詰められた状況の彼女だからこそ、覚悟は尋常じゃなかった。ドラマパート内での彼女の台詞にはこんな裏があったのではないかなと考えます。ジャケット絵の表情とかこう考えてから見ると凄いですよ。ぜひ考えてみてください。

この辺はいつかssに書きたいと思っている部分なのであまり多くは語りませんが、草薙星蘭はそういう人間であってほしいと思っています。

 

上記の2人が「敗北を味わった」側で、天羽光駆だけがそうではありません。ですが、彼女は始めから二人のことを認めています。これが前述した「負けなくても認められる」パターンです。すごく、人間が出来ていると思います。これは担当補正マシマシです。対戦よろしくお願いします。

 

かといって、天羽光駆が負けていないわけではありません。彼女は「認めたから負けた」んです。負けたという表現が分かりにくけれれば、「劣等感を抱いた」と置き換えてください。そうすればわかると思います。ドラマパートのグランプリ発表後の光駆の心情描写でわかってください。わからなかったら諦めてください。自分の言語センスがなさ過ぎてここをどう伝えていいものか分かりません。ssなら書けるかもしれません。多分書くんだろうなぁと思っているので楽しみにしなくていいです。見かけたら冷やかしに呼んでくれると嬉しいです。

 

これで、三人が互いに対して劣等感を抱いているということが分かったという前提で話を進めることが出来ます。はい、出来るんです。

この三人が劣等感を抱いて、果たしてそのままそれを飲み込んではい終わり、なんてことがあるんでしょうか。まあ、そんなわけはなくて、そこに立ち向かおうとするのがSTAR ELEMENTSの三人ではないでしょうか? というわけで戦うんですけど、武器がない。じゃあどうするか。それはもちろんそれを手に入れるために努力するしかありません。

 

ここで「”可愛い” より ”比喩” がいい」の話です。

 

今、彼女達が手に入れられる武器はどちらでしょうか?

 

それはもちろん「比喩」の方しかありません。そして、「比喩」の方しか必要ないのです。

 

彼女達が今求めているのは、「可愛さ」とか「綺麗さ」とかそういう外的要素ではないのです。自分が抱いている劣等感を埋めてくれるような、「自信」とか「勇気」とか、そういう類の武器なのではないでしょうか? 

 

それを裏付けるように、歌詞の中には「元気のドレス」とか「瞬きの間に心を決めたよ」とかそういう言葉が用いられています。そして、二番Bメロ終わりの「一途な視線の君が そこにいるから」という歌詞、これは自分以外の2人のSTAR ELEMENTSのメンバーを指しています。なんなら一番の方の「君」もそうです。

この歌に、STAR ELEMENTS以外の人間は登場していません。これに気づけると、更にこの三人が好きになります。なりましょう。

 

話を戻すと、「一途な視線の君が そこにいるから」と言う歌詞は、他の2人の表情を見て自分を鼓舞する姿が描かれており、まさに「セッサタクマ」なんです!!!!(爆発)

 

 

4.まとめ

 

ここまで、「”可愛い” より ”比喩” がいい」を餌にしてSTAR ELEMENTS の話をしてきましたが、どうだったでしょうか? 言語野が普通の人間の15%しかないのでつたない文章だったと思いますが許してください。大体のニュアンスでも伝わっていれば嬉しいです。

是非、皆さんも今一度この三人の関係を考え、妄想のエサにしてみてください。